『悪の花』102 パリの夢

パリの夢

死すべき人間がけっして見たことのないような、
この恐ろしい風景の、
今朝になってもまだ残った映像が、
ぼやけて遠ざかろうとも、私を魅了する。

睡眠は奇跡に満ちている!
奇妙な気まぐれによって、
私はその眺めから、
不ぞろいな植物を追い払った。

そして己の才能に誇らしげな画家として、
私は自らの絵の中に、
金属と大理石と水による
心酔わせる単調さを味わっていた。

階段とアーケードで出来たバベルの塔、
それは無限の迷宮だった。
くすんだ金や磨かれた金の中に落ちていく
噴水と滝に溢れていた。

重々しい巨大な滝が、
水晶のカーテンのように、
金属の壁から、
まばゆく、吊り下がっていた。

木々ではなく、列柱が、
静かに眠る池を囲み、
そこに、巨大な水の精たちが、
女たちのように姿を映していた。

一面の水が青々と広がっていた、
バラ色と緑色の岸辺の間で、
百万里にも及んで、
世界の果てへと向かって。

それは物言わぬ石たちであり、
魔法の波たちであった。それは、
映し出す全てのものに
幻惑されている巨大な鏡であった。

不安もなく黙々と、
幾つものガンジス川が、天空の中、
ダイアモンドの深淵の中へと
その水瓶の中の宝を注いでいた。

我が夢幻境の建築士として、
私は、望みのままに、
宝石のトンネルの中に
飼い馴らした大洋を潜らせようとしていた。

そして全てが、黒色さえもが、
磨かれ、澄み、虹色に輝いているようだった。
液体がその栄光を
結晶化した輝きの中に埋め込んでいた。

他には星すらなく、太陽の
残骸すら、空低くにもなく、
個性的な炎に燃える
この驚異を輝かしてはいなかった!

この動く奇跡の上に、
漂うのは(恐ろしい新奇さ!
全ては目のため、耳のためには何もない!)
永遠の沈黙だった。

炎に満ちた両目を開けるとき、
私が見たのは、自分のぼろ部屋の恐ろしさ。
そして自分の魂の中に戻って感じたのは、
不吉な不安の指すような痛み。

柱時計が陰鬱な調子で、
唐突に正午の刻の音を鳴らしていた。
そして空が暗闇を
ぐったりとした悲しい世界に注いでいた。