『悪の花』107 孤独の酒

孤独の酒

波打つ月が揺らめく湖へと、
その物憂げな美しさを湯浴みさせようと送る
白い輝きのように、我々の方へと滑り込む
雅な女の奇妙な視線。

賭博者の手に握られた最後の銀貨袋。
痩せ細ったアデリーヌの淫蕩な接吻。
人の苦悩が遠くで叫んでいるのに似た、
神経を逆撫でする甘い音楽の音色。

それら全ても、深遠な酒瓶よ、
忠義深い詩人の渇いた心のために
お前の豊かな膨らみが保つ、心染み入る香料に価いしない。

お前は詩人に、希望、若さ、生命を注ぐ。
―そして傲慢という、あらゆる売淫の宝を注ぎ、
我々を勝ち誇らせ、神々に等しい存在にする。