『悪の花』115 ベアトリーチェ

ベアトリーチェ

灰まみれで石灰質の、緑のない土地で、
ある日、自然に不満をこぼしていた時、
あてもなく彷徨いながら、私の思考の
短剣を心にあてて研ぎ澄ましていた時、~
私は見た、まさに正午、頭の真上に
嵐の陰鬱で大きな雲が降りて来るのを。
そこには邪まな悪魔たちの群れが乗っていて、
残酷で奇怪な小人たちにそっくりだった。~
彼らは冷淡に私を眺め出し、
そして狂人を眺める通行人のように、
合図や目配せを幾度も交わしながら、
彼らが笑い、仲間うちで囁き合うのを私は聞いた。

――「この戯画をとくと眺めてみようじゃないか、
本物の姿を真似ているハムレットの影を、
視線は定まらず、髪が風にたなびいている。
実に憐れではないか、このお調子者を、
この乞食を、この休暇中の道化を、この馬鹿者を見ているのは?
何故なら彼は芸術的に自分の役をこなすことが出来るし、
鷹やコオロギや、小川や花々に
自分の苦悩の歌への興味を持たせもすれば、
そうした古い策略の作者である我々にさえも、
呻きながら大衆相手の長広舌を唱えもする。」

私には(私の慢心は山と同じくらいに高く
悪魔たちの雲と叫び声を見下ろしている)
単純に、この崇高な頭を背けることも出来ただろう。
しかし私はこの猥雑な群れの中に、
これほどの罪が太陽をよろめかせなかったのか!
二つとない眼差しをもった我が心の王妃が
彼らに混じって私の陰鬱な悲嘆を笑い、
時おり彼らに汚い愛撫を与えているのを見てしまったのだった。