『悪の花』001 祝福

崇高な力が命じるところによって、
詩人がこの憂鬱に落ち込んだ世界へと現れたとき、
彼の母は慄き、呪詛の言葉に満ち溢れて、
神に向かってその拳を握り締めた。

「ああ! こんな情けないものを育てるくらいなら、
どうして私はマムシの塊でも産み落とさなかったのでしょうか!
呪うべきは、私の腹が贖罪を宿した
儚い快楽の日々でございます!

あらゆる女の中から、御身が私を選び、
私の不運な夫に嫌悪を抱かせたのですから、
そして私は、この背の歪んだ怪物を、恋文のように、
炎の中へと投げ捨てることが出来ないのですから、

私を苦しめている御身の憎しみを
御身の悪意が奏でる呪われた楽器の上に投げ返し、
そして、この憐れな木を力いっぱい捻じりあげて、
病毒に侵されたその新芽が生えてこないようにしてしまいましょう!」

そうして彼女は己の憎しみの唾を飲み込んで、
永遠の将来を理解することなく、
ゲヘナの底で彼女自身が
母親としての罪に充てられた薪木の用意をする。

しかしながら、天使の目には見えない守護のもとで、
廃嫡の子は、太陽に酔いしれて、
食するもの、飲むもの全ての中に
神肴と神酒とを見出すのであった。

彼は風とともに戯れ、雪とともに語らい、
十字架への道の最中で歌を歌い酔いしれる。
精霊は、彼の巡礼に付き従い、
森の中の鳥のように陽気な彼を見て、涙する。

彼が愛することを望むものは皆、恐れとともに彼を観察し、
さもなくば、彼のもの静かさに勢いづいて、
彼から悲鳴を引き出すことのできる者を探し、
彼を自分たちの残虐さの実験台にする。

彼の口にあてがわれたパンと酒の中に
人々は灰と、汚い唾を混ぜ合わせる。
偽善によって人々は、彼が触るものを投げ捨て、
彼の足あとを踏んでしまった罪を互いに非難し合う。

彼の妻は公けの広場に駆けつけて、こう叫ぶ。
「彼が私のことを愛するのに十分なほど美しいと思ったのですから、
私は古代の偶像の役目を引き受けましょう。
そして偶像たちのように自分を金色にしてしまいましょう。

それから私は、甘松香と、乳香と、ミルトと
跪拝と、肉と、そして酒に酔い痴れて、
私を愛する心の中で、神聖な賞賛を嘲笑いながら
横取りすることができないか試してみましょう。

そして、この不敬虔な喜劇にうんざりしたときには、
私は彼の上に、この細くも強靭な手を押し当てましょう。
そして私の、ハーピーの爪にもにた爪は、
彼の心臓まで道を穿つすべを知っているでしょう。

恐れに身を震わせる生まれたばかりの鳥のように、
真っ赤な心臓を、彼の胸から引き剥がし、
そして、私の可愛い動物を満足させるために、
私はそれを尊大に、地面に投げつけてやりましょう!」

彼の目は輝く玉座を目にする天に向かって、
澄み渡った詩人はその敬虔な両腕をかかげる。
すると大きな稲妻が彼の明晰な精神から生まれ、
猛り狂った人々の姿を彼の目から隠す。

「我が神よ、祝福あれ! 我々の不純さに対する
神聖な治療法として、そして聖なる欲望を
強者たちにもたらす、最良にして最も純粋な
本質を与え給う神よ!

私は知っている、あなたが詩人のための場所を
聖なる軍団の至福の列の中に設けていることを。
そして座天使、力天使、主天使たちの
永遠の宴に、彼を招待することを。

私は知っている、苦しみこそが唯一の高貴さであり、
大地も地獄もけっして蝕むことはできないことを。
そして、私の神秘的な冠を編むためには
時間のすべてと、宇宙のすべてを必要とすることを。

しかし、古代パルミアの失われた宝石や、
未知の金属や、海の真珠が、
あなたの手で掬い上げられようとも、
あの美しい、眩く輝く王冠に及びはしないだろう。

何故ならば、それを形作るすべてである、純粋な光は
始原の光線の聖なる源から汲み取られ、
死すべき人間の目は、その光の輝かしさのただ中で、
もはや曇らされ嘆き声をあげる鏡でしかないのだから!」