『悪の花』073 憎しみの樽

憎しみの樽

憎しみは、青ざめたダナイードたちの樽だ。
取り乱した復讐が赤く強靭な腕で、
甲斐もなく空っぽの闇の中に汲み入れるのは、
大きな手桶にいっぱいの死者たちの血と涙。

悪魔がこの深淵に秘密の穴を開けていて、
そこから千年もの汗と努力が零れ出してしまう、
たとえ彼女が犠牲者たちを生き返らせようとも、
また搾り取るために彼らの肉体を蘇らせようとも。

憎しみは居酒屋の奥にいる酔っ払いだ。
いつも渇きが蒸留酒から生まれ出るのを、
レルネーのヒドラのように殖えるのを感じている。

―しかし幸福な酒飲みはその征服者を知るが、
憎しみは、憐れむべき運命を与えられ、
けっして机の下で眠ることが出来ない。