『悪の花』077 憂鬱

憂鬱

僕はまるで、雨の降り続く国の王様みたいだ。
裕福だけど力がなく、若いけれどすっかり老いている。
教師たちのごますりを軽蔑している彼は
犬たちといても、他の動物たちといるように退屈している。
何も彼を楽しませられない。狩りの獲物も、鷹狩りも。
お気に入りの道化が歌う、グロテスクな物語も今では
この残酷な病人の額に気晴らしを与えはしない。
百合の紋章のベッドは、墓石へと変わり、
王子であれば皆素敵と思うような、着飾った婦人たちは
みだらな衣装を考え出して、
この若い骸骨から微笑みを引き出すことすらもはやできない。
彼のために金を作り出す賢者も、けっして
彼の存在の中にある腐った要素を摘出することは出来なかったし、
ローマ人たちから僕たちのもとへと伝わる、例の血の風呂も、
力のある人たちは老いの日々にそれを思い出すというけれど、
この呆然とした死体を暖めることは出来なかった。
その死体には、血の代わりにレーテーの緑の水が流れているのだから。