『悪の花』089 白鳥

白鳥
I

アンドロマックよ!私はお前を思う!この小さな河、 それは哀れで悲しい鏡、そこにお前がかつて輝かしたのは 寡婦となったお前の苦悩の、壮大な威厳だった。 お前の涙で大きくなった、この偽りのシモイス川が、

私の肥沃な記憶の中に、ふいに子を宿らせた。 それは私が新しくなったカルーセル広場を横切っている時だった。 古いパリはもうここにない。(ある都市の姿は、 変わり行く、ああ!死すべき人の心よりも速く。)

私の心の中に見えるのは、ぼろ小屋のあの一群や、 あの作りかけの柱の数々、 雑草や、水たまりの水で苔むした大きなブロック、 そしてガラス窓の中で輝く、雑然としたがらくた。

その場所に、かつて動物園があった。 そこで私は見た。ある朝、空はまだ 冷たく澄んでいるなか、「労働」が眼を覚まし、ごみ集めの荷車が 静かな大気の中に、陰鬱な嵐を巻き起こすような頃、

一羽の白鳥が、檻から逃げ出したのだろう、 水かきのついた足で、乾いた敷石をこするようにして、 ごつごつとした地面に、その真っ白な翼を引きずっていた。 水もない溝の近くで、その動物は嘴を開けて、

苛立ったかのように、埃の中に翼を浸して、 その心を故郷の美しい湖で満たして、こう言ったのだった。 「水よ、お前はいつ雨となる?雷よ、お前はいつ轟く?」 私には見える、この不幸な生き物は、この奇妙で非運な伝説は、

空へ向けて幾度か、オウィディウスの人間のように、 皮肉で、残酷なまでに青い空に向けて、 震える首の上に、飢えた頭を伸ばし、 神に対する非難を告げているかのようだ!

II

パリは変わる!しかし私の憂鬱の中では何一つ 動きはしなかった!新しい宮殿、建設の足場、石材、 古い下町、全てのものが私にとっては寓意となる。 そして我が親しき思い出たちは岩よりも重い。

そうして、このルーヴルを前にして、ある思いが私に圧し掛かる。 私は、我が偉大な白鳥を思う、気を狂わせたかのような仕草で、 追放者のように、滑稽にして崇高で、 休むことなく、ある望みに苦しめられている。そして、あなただ、

アンドロマックよ、偉大な伴侶の両腕から、 卑しき獣となり、尊大なピュロスの手に落ちたあなたは、 空っぽの墓のそばで恍惚として身をかがめている、 ヘクトールの寡婦にして、ああ!ヘレヌスの妻よ!

私は思う、やせ細った肺病病みの黒人女を、 泥の中でふらつき、血走った眼で探す ここにはない美しいアフリカの椰子の木は、 霧が生み出す巨大な壁に隠されている。

二度と、二度と戻りはしないものを 失った全ての者たちを!涙によって渇きを癒し、 養母の狼のように「苦悩」に乳を与える者たちを! 花のように萎れていく痩せた孤児たちを!

こうして我が精神が森の中を彷徨うなか、 懐かしい「思い出」が、角笛を胸一杯に吹き鳴らす! 私は思う、とある島に忘れられた船乗りたちを、 捕虜たちを、敗北者たちを・・・そして他の多くの者たちを!