『悪の花』010 敵

僕の青春は暗闇に覆われた嵐でしかなかった。
ところどころに輝く太陽が差し込んだけれど、
雷と雨が荒れ狂った結果、
僕の庭には、わずかに赤い果実が残されるのみ。

いまや僕は思想の秋に達したのだから、
シャベルと熊手を使い、
墓のように大きな水溜りのできた
水浸しになった地面をまた整えなきゃならない。

僕が夢見る新しい花々は、はたして、
砂浜のように洗われたこの地面の中に
不思議な養分を見出し、力を手にするのだろうか?

苦悩! 苦悩だ! <時間>が命を食っている。
そして姿の見えぬ<敵>が僕らの心に噛り付き、
僕らから失われた血で、すくすくと逞しくなっていく!