『悪の花』093 過ぎ行く女へ

過ぎ行く女へ

道が耳を聾さんばかりに私のまわりで喚いていたときのこと。背は高く、すらりとし、纏った喪服には厳かな苦しみを湛えた、一人の女が通った。持ち上げられた豪奢な片手には、花模様と縁飾りが揺れ動く。

機敏にして上品、その足は彫刻のよう。私はといえば、私は飲み干そうとしていた、常軌を逸した者のように痙攣しながら、彼女の目という、嵐の芽生えた鉛色の空の中に、心を惑わす甘美さと、命を奪う快楽とを。

閃光・・・そして夜! ――束の間の美よ、君の眼差しが突然、私を蘇らせたというのに、もはや君には永遠の中でしか逢えないというのだろうか?

どこか別の、ここから遠く離れた地で! いや遅すぎる、おそらくもう決して! なぜなら私は君が逃げ行く先を知らず、君も私の行く先を知らぬのだから。おお、私が愛したはずの君よ! おお、それを知りさえしていた君よ!