『悪の花』 044 可逆性

快活さに満ちた天使よ、あなたは苦悩を知っているか、
恥辱と、後悔と、嗚咽と、憂鬱と、
そして、紙を皺くちゃにするように、心臓を締め付ける
あのおぞましい夜々のおぼろげな恐怖とを?
快活さに満ちた天使よ、あなたは苦悩を知っているか?

善良さに満ちた天使よ、あなたは憎悪を知っているか、
暗闇の中で握り締められた拳と、胆汁の涙とを、
<復讐>がその地獄の召集を打ち鳴らし、
我らの能力を統べる隊長となる時?
善良さに満ちた天使よ、あなたは憎悪を知っているか?

健康に満ちた天使よ、あなたは熱病を知っているか、
生気のない救済院の巨大な壁に沿って、
流刑者のように、足を引きずり進みながら、
稀有な太陽を探し、唇を動かしているような?
健康に満ちた天使よ、あなたは熱病を知っているか?

美しさに満ちた天使よ、あなたは皺を知っているか?
老いていく恐怖を、そして、献身の裏に隠され恐怖を
我らの貪欲な目が渇きを癒した眼の中に読み取るという
このいまわしい苦悩を知っているか?
美しさに満ちた天使よ、あなたは皺を知っているか?

幸福に、喜びに、光に満ちた天使よ、
死にゆくダヴィッドは、お前の魔法に掛けられた肉体から
発散する霊気に対して、健康を願いもするだろう。
しかしお前に対して私は、天使よ、お前の祈りしか乞い願いはしない、
幸福に、喜びに、光に満ちた天使よ!