『悪の花』030 暗き淵より叫びぬ

君の憐れみを請おう、私の愛する唯一の人よ、
私の心が落ちてしまった暗い深淵の底から。
ここは鉛色の地平線が取り囲む陰鬱な世界、
夜には恐怖と神への冒瀆とが泳ぎ回る。

熱のない太陽が6ヶ月間浮かび、
残りの6ヶ月間は夜が大地を覆う。
それは極北の地よりも剥き出しの国。
――動物も、小川も、緑も、森もない!

この氷の太陽の冷たい残酷さに
凌駕する恐怖など世界に存在しない。
この広大な夜は太古の混沌に似ている。

私は最も卑しい動物たちの運命を妬む、
彼らは愚かな眠りに浸ることが出来るのだから。
それほどまでに時の糸巻きはゆっくりと繰られていく!