『悪の花』056 秋の歌

秋の歌

もうすぐ、僕らは冷たい闇の中へと沈んでいくんだ。さよなら、短か過ぎた僕らの夏の、鮮やかな輝きよ! 僕にはもう、陰鬱な衝撃とともに、庭の敷石が落ちては鳴り響く音が聴こえてきている。

あらゆる冬が、僕という存在の中へと帰ってくる。怒り、憎しみ、震え、恐れ、辛く強いられた仕事。すると、北極の中に閉じ込められた太陽のように、僕の心は赤く凍りついた塊でしかなくなるだろう。

僕は震えながら、落ちていく薪の音をひとつずつ聴いている。処刑台を建てる音も、これ以上に鈍くはないだろう。僕の精神は、疲れを知らない重い破壊槌に打たれて崩れようとしている塔に似ている。

この単調な振動に揺さぶられていると、大急ぎで、誰かが何処かで棺を作っているような気がしてくる。でも誰のために? ――昨日は夏だった。そして今は秋だ! この不思議な物音が、旅立ちのように鳴り響いている。

あなたの切れ長の眼の緑がかった輝きを、私は愛している。甘く美しい人よ。でも今日は、何もかもが私にとっては苦々しい。何一つ、あなたの愛も、寝室も、暖炉も、私にとっては海の上に輝く太陽には、勝りはしない。

しかし、それでも私を愛して欲しい。優しい心よ! 裏切り者のため、卑怯者のためにでも、母になってはくれないか。恋人でも、姉でもいい、栄光の秋、もしくは沈む夕日のような、束の間の優しさとなってほしい。

務めは短い! 墓が待っている、貪欲に! お願いだ、このままで居させてくれ。あなたの膝の上に額を置いたまま、白く焼けるような夏を惜しみながら、終わり行く季節の、黄色く優しい輝きを味わせてくれ。